僕は後ろを振り返らずに夜の煙突を上った。



カーネーションというバンドをご存知だろうか。
母の日のPRのために花屋が結成した即席企画バンドなどではなく、25年以上の活動歴を誇る日本のロックバンドである。
その間に編成は変化し続け、現在のメンバーは2人。
ギター&ボーカルの直枝政広氏と、ベースの太田譲氏。2氏とも年齢は50を超えており、いわば「おじさまバンド」だ。
しかし、この叔父様たちが今宵、日本のロック史に新たな一歩を静かに刻んだと、少なくとも僕はそう思っている。


■カーネーションの来歴(wiki先生)


音楽を言葉で語るには僕は余りに浅学であるが故、なるべく簡潔に僕の愛するバンドを紹介したい。


一つ、カーネーションはレコーディングバンドである。
ギター&ボーカルの直枝氏は相当なレコード収集家であり、音質へのこだわりは並のものではない。
昨年、カーネーションとして過去に発売した7枚のアルバムを全てリマスターし、話題となった。


一つ、カーネーションはライブバンドである。
直枝氏の艶のある贅沢な声色と、対するエッジーなギタープレイ。大田氏のバンドサウンドをしっかりと支えるベースラインとコーラス。
齢50を迎えても衰えるどころか、切れを増すパフォーマンスは観る者を圧倒しながらも、優しい音のベルベットで包み込む。


そして先程、昨年から続いたアルバム「Velvet Velvet」ツアーの最終公演の模様が、興奮の渋谷QUATTROよりUSTREAMでオンタイム配信された。


■【動画】CARNATION LIVE 「Velvet again Final@渋谷CLUB QUATTRO」USTREAM配信分


幸運なことに僕はほぼ全篇に渡って、ライブの模様をPCから観ていた。
ネット配信とは思えぬほどの高音質に驚かされながら(その分映像はウィザードリィ級の解像度であったが)音に酔った。
部屋のスピーカーから、熱狂と至福が流れてくる。
月並な感想だが、興奮した。
それは僕だけではなく、同時にUSTREAMを観ていた1100人あまりの人たちも同様であることを、Twitterに流れる無数のコメントから知ることができた。


正直な所、知名度が高いとは言えないバンドだ。鳴らしている音だって、流行のそれとは遠いのかもしれない。
しかし、20数年に渡る堅実な音作りと揺らがない音楽への情熱、いわば「レコード的アナグロ感」が、
新時代の分度器たらんUSTREAMTwitterなどの「デジタルな物差し」によって輪郭をなぞられ、人々に発掘されることの何と痛快であることか!
贔屓であることを差し引いても、これから彼らへの視線は確実に今よりも熱いものになると期待せざるを得ないのだ。


興味を持っていただけたなら、是非音源を手に取っていただき、果てはライブハウスで共に体を揺らしたいと願うばかりである。
深淵なるカーネーションの世界に、思わずまだ観ぬ貴方を手招きしたくなる、そんな今宵のライブであった。


LIVE CARNATION・・・日本人アーティスト初、ライブ音源をFLAC配信。
カーネション公式HP


Velvet Velvet (初回限定盤)(DVD付)

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