芸人Yのこと

「鳴かず飛ばずだったここ半年ぐらいの自分のことを、日記でも書いて整理しよう」 昨晩、寝る前まではそう思っていた。 だけど、昼過ぎに起きてみたら、それどころじゃなくなってた。 地元の友人で、芸人のYが、亡くなったらしい。 母から連絡がきていた。 …

日記

飽き症がゆえ、日記というものが続いた試しがない。 そのくせ、ごくたまに、執筆欲が湧いてくる。 今回のそれも、おそらく今日限りなので、昔やってたブログを引っ張りだして、ちょっと書き殴ってみようと思う。 関係ないかもしれないけれど、そういえば大学…

恋人は去りました

トーストに塗りたくる ジャムのように 優しさを押しつけて おいしいとほおばる君を 隣で見ていたかった だけど君は満腹 恋人は去りました 恋という行為に 実は行為そのものに 恋をしてたけれど これはこれで 恋だったのかな つまり僕は身勝手 恋人は去りまし…

フィルム

金曜日の街に 見慣れないジャケット 一歩先を歩くピンヒールの 確かな足取り 暗がりの喫茶店に浮かんだ 決意を秘めた口許 最後の表情が いつもより綺麗で 見惚れてしまった だからそう フィルムが切れると知りながら 続きのシーンが見たくなったストーリーを…

推敲しない日記

推敲しない文章はただの羅列なのだろうか。 僕は身勝手だった。 自分の足元の不安定さを、あの子に押し付けようとして、 あの子の視界も歪ませてしまった。 些細なささくれはとても痛かっただろう。 その憶測すら、的外れでありそうで、 それほどに身勝手。 …

言葉にすれば

言葉にすれば叶うなら 塵も積もればなんとやら だけどどうだい 俺のこと 地べたにころんで 土まみれ 君に話せば叶うなら 笑顔が見たくて嘘八百 だからそうだろ 俺の顔 笑い皺だけ増えていく それは偽物の皺です 健気に笑う嘘の顔です あの子を騙すな そう騙…

知りたいこと

君が大人になるように 僕だってそうだという さっきまで知らなかったけど 君が嘘をつくように 僕だってそうとも言う きっとずっと知らなかったけど 知らないふりして たまに知ってるふりもして ふいに聞かれて 答えにつまった 知りたい知りたい 知れない知れ…

ギブユーチョコレイト

スーパーでレジ打ちをしている。 今日のことだった。 僕の立つレジ台に一人の老紳士がやってきて僕に訪ねた。 「アルファベットチョコはありませんか?以前はあったんだが、今日はどうも見当たらなくて…」 「アルファベットチョコ」とは老舗・名糖産業が販売…

「明日に向って撃て!」を観ました。

うまくやれると思っていたんだ 夢で夢を奪う人生を ユーモラスの銃弾に込めて 泥水に倒れこむ自転車 映るホイールは空回りさ 最高だろう 奪い取った昨日なら 利子付きの未来で返してやる それでもいいならついてこいよ 止まった時間の中を駆け抜けろ 明日に…

羅列4「透明な傘の上に雨が咲いた」

大貫妙子さんが1978年に発表した「都会」という楽曲がある。 この歌詞に七夕の日の心は囚われていた。 華やぐネオン、眠らない街に踊る人々を横目に「私」は凛と告げる。 「その日暮らしは止めて 家に帰ろう 一緒に」 1978年といえば日本が鰻登りの夢を見て…

羅列3「目覚めると僕は英語を話せるようになっていた」

目覚めると僕は英語を話せるようになっていた。 そんな夢物語は夢の中でも訪れそうにないので、ここはひとつ奮起してみることにした。 「私、英語ペラペラになります計画」 大きな目標としては、この2つ。 ■日常会話を英語で嗜める程度の英語力を身につける …

羅列2

眠れない夜の朝は早くて。 とはいえ早朝に起きることも珍しい怠惰な身分なので、ひょいと近所を散歩してみることにした。 現在の根城は駅から程なく近くて、利便は良し。 けれど、おはようからおやすみまで小豆色の電車が線路を這う音がする。 まあ不思議と…

トリビアの泉

■ケース1 いかなる時も全力を尽くすこと。 それが私の全てでした。 幼い頃から、白いボールとその先に転がる夢だけを、ただひたすらに追いかけてきました。 手を抜いたことなど一度もありません。 大人になるにつれて、私は世間が羨む「成功」とやらを手にし…

羅列1

ブログを書くとはひどく小っ恥ずかしいもので、世界に蔓延る蜘蛛の巣に自らの言葉を貼りつけたとしても誰にも読まれずじまい。 往々にして迎える結末はひどく寂しいものである。 私とて、この文章とて例外ではない。 物陰から覗く自己顕示欲も、灰色の吐息を…

「希望を届ける歌」

「希望を届ける歌」 仮初のあなたに 似合いの服 「自分らしく生きていけたら」 丈が余って ちょうどいいね スポットライトの熱で あなたの情熱 掻き消されないかって ハラハラしちゃうの さあ歌ってよ やけに大声で 強く拳を握って 眉間にしわ寄せて メッセ…

サヨナラのうた

「サヨナラとサヨナラ」 9回裏まで待っててよ サヨナラなんて言わないで ホームベースを踏まないで 帰りの電車に乗らないで 中継ぎが打たれちゃって 僕らは打てなくって オモテはあって ウラはなかった うまく変換できないな うまく表現できないな 描いただ…

休日を泳ぐ僕は魚になる

「休日を泳ぐ僕は魚になる」 休日を泳ぐ僕は魚になる ただただ漂って 夢を切り裂く鳥になる 明後日までには あなたの悲しみが僕を嗜める となりの芝が青いわねって 枯れた瞳に涙を浮かべた 平日の空は各駅停車 鈍獣のようなステップで 躓かないようにだけし…

耐えがたくも甘い季節に

5階の講義室の窓から、秋が揺らめいていた。 ついついと大きな欠伸をする。 先程から講義の内容は全く頭に入っていない。 宙ぶらりんの23歳が過ごす、昼下がり。 今日こそは小春日和。 先週末はずっとずぶ濡れの泥だらけになっていたというのに憎いもので、…

さよならラバーボーイ(バイバイ・ママより)

「さよならラバーボーイ」 世界中の神秘よりも煌めく瞳 誰も知らない秘密を探しに行きましょう つないだ手なら解かぬままで 白い壁を紫色の愛で埋め尽くして 誰も知らない世界を描いてしまいましょう 2人だけの小さくて大きな箱庭 あなたが願うなら 1年中が…

ファイト・クラブへようこそ

微睡みくれぬ神に嫌気がさして せめてと夜の部屋を飾る 飾り物になったのは 俺の心か 灯りをくれぬ街に嫌気がさせど それでも夜の道を探して歩く 辿り着いた廃墟で 俺は眠った 目を閉じたならようこそファイト・クラブ 感情の生き血を浴びせておくれ 目を閉…

松本くんが嫌いだった。

小学校の頃、僕は松本くんが嫌いだった。 言わずもがな、松本くんも僕が嫌いだった。 これと言った理由はきっとなかった。 強いて挙げるなら、当時の小学校という狭い小屋の中で僕らは2人共「優等生」で、 大人に媚びることを覚え始めていた僕は教師たちから…

マリオネット

『マリオネット』 この職について何年経ったかは定かではないが、もう限界だ。 名ばかり配管工としての日々は、私の心の残機をゆっくりと確実に削っていった。 誘拐事件解決にレース出場、ゴルフ、テニス、医師、昔の冒険の焼き増し、更には次元の壁をも超え…

金の谷のヤワラカ

『金の谷のヤワラカ』 長きに渡って無秩序な金の採掘で繁栄を続けた「金の谷」も遂に神の怒りに触れてしまったらしい。 神は生物や昆虫を意のままに操り、谷の人々を、住処を襲う。数日も経たずして、谷は荒廃してしまった。 更に神は人々を根絶やしにせんと…

詰問の多い料理店

『詰問の多い料理店』 〜レストラン・ク・レーマ〜 いらっしゃいませ、当店は詰問の多い料理店となっております。 それでは極上の詰問をお楽しみ下さい。 と、若い店員が促すと隣のテーブルに座っていた男が勢い良く立ち上がった。 「おい、このスープ髪の毛…

ロックンロールが鳴り出さないっ

ロックンロールが鳴り出さない ロックンロールが鳴り出さない コードがうまく押さえられない そもそもギターも持ってないぜ 父さんの信頼と母さんの期待なら 僕の怠惰で塗り替えてしまったさ 部活の帰りに聴いたビートルズは なにも教えてはくれなかったんだ…

雨は何処で降るのか

5月の病が雨のように降りかかれば 暖かい布団の中で 狸寝入り ああ頼むよ まだ剥ぎ取らないでおくれ 今は 甘えていたいんだ 顔まで羽毛で覆えば 聴こえるだろう 怠惰で不毛な わたしの鼓動 ああ頼むよ まだ動き出さないでおくれ 今は もの言わぬ人形のままで…

ビーナスとシューカツ

手持ちのルークを得意に並べて 笑うリクルートスーツ 履き慣れない革靴姿も やけに愛しいの チェックメイトな未来浮かべて 語るエリートコース 夢に見ていたガラスの靴 履かせてくれるのね ダーリン いまごろシューカツしてる 露骨に狡猾 勇者の一手 ダーリ…

僕は後ろを振り返らずに夜の煙突を上った。

カーネーションというバンドをご存知だろうか。 母の日のPRのために花屋が結成した即席企画バンドなどではなく、25年以上の活動歴を誇る日本のロックバンドである。 その間に編成は変化し続け、現在のメンバーは2人。 ギター&ボーカルの直枝政広氏と、ベー…

ぺんてるを買ってまで。

最近は多くの時間をスーパーのレジ台で過ごしていたりする。 簡単な仕事の割に実入りがいいのだが、如何せん暇と退屈が難敵で、だからそいつを紛らわそうとついつい客とカゴの中身を眺めてしまう。 有り体に言えば、買い物カゴの中身は各々の生活が溢れてい…

マツオカシロウさん。

失くしたかもしれないと焦っていたTSUTAYAのDVD。 店員さんはスマイル浮かべて言う。「ご返却していただいています^^」 返してくれたのは、マツオカシロウさん。 僕じゃない、僕じゃない。 出席日数が足りないと思っていたとある授業。 教授は目を細めて言…