マリオネット





『マリオネット』




この職について何年経ったかは定かではないが、もう限界だ。
名ばかり配管工としての日々は、私の心の残機をゆっくりと確実に削っていった。
誘拐事件解決にレース出場、ゴルフ、テニス、医師、昔の冒険の焼き増し、更には次元の壁をも超えさせられた。
そんな地獄のような労働を強いられながらも給与のほとんどは不当に会社に没収され、手元に残るは1本のキノコのみ。
これで大きくなれとでも言うのか。過労のせいか私のキノコなどはもはや使い物にもならないというのに。
トントン。自暴自棄になった私の肩を叩く者がいた。
「お辛いでしょうに。心中お察しします」
かつて対峙させられた、大きなトゲのついた甲羅を持つ男が慈悲深い目で私の背中を見つめていた。
お前に何がわかる、とヤケクソに火の粉でも浴びせてやろうと振り返った私を遮り、彼は続けた。
「これまで私も幾度となく、拉致監禁をするように強要されてきたのです。この理不尽、晴らさずにはおけません。今こそ共に立ち上がりましょう」
立ち上がるとは何か。枯渇した私の機能を再び手に入れることが出来ると言うことか。
「労働者の権利を、今こそ主張するのです。貴方が身に纏っている服の色が我々の主張の全てではありませんか」
目を爛々と輝かせて、彼は私にボム兵の詰まった箱を手渡す。
「まずは京都を赤の広場に」
氏の言葉の意味は分からなかったが、私は不意に私の全く振るわない私自身を笑ったあの小生意気な姫の顔を思い出し、
ひと思いにボム兵を巨大なビルに投げ込んだ。




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