トリビアの泉


■ケース1


いかなる時も全力を尽くすこと。
それが私の全てでした。


幼い頃から、白いボールとその先に転がる夢だけを、ただひたすらに追いかけてきました。
手を抜いたことなど一度もありません。


大人になるにつれて、私は世間が羨む「成功」とやらを手にしたのかもしれませんが、
それ自体に価値を見出すことはできなかったのです。
全力を出す、その一瞬だけに私は生きているのですから。


もちろん、その夜も全力を尽くさんとしたのです。
おいおい、尽くしたのは精力だろ?と勘違いをなさる方がいらっしゃいますが、
声を大にして言いたい。
私は私の哲学にしたがったまでなのです。
マウンド上には最高とうたわれたピッチャー。
スラッガーの私が打席に立たない理由がどこにあるのでしょうか。
両者の間に存在する、言い得ぬ緊張感と、血たぎる興奮。
長年、追いかけてきたものが目の前にある。
この世に生を受けたのは全てこの瞬間のためだったのだと、本能が囁いたのです。


もう説明は十分でしょう。
だから、私はバットを、自らの夜のバットを強く握ったのです。
いや、厳密には握ってもらいました。


もちろんそれがハイリスクノーリターンな戦いであったことは互いに(何となく)承知していたので、その後の失墜は仕方が無かったように思います。
しかし悲しかったのは、相手ピッチャー…「彼女」が私とのあの勝負を「無かったこと」にしようとしたことでしょうか。
いくら「彼女」がノーゲームを主張しようと、私の興奮と記憶がなくなることはないので、まあ取るに足らないことなんですがね。


先日、テレビにて久々に「彼女」の姿を見たもので、こちらに寄稿した次第です。
長くなりましたが、私から一つ、皆さんにお伺いしたいのです。


山本モナってマジでエロい」


これってトリビアになりませんか?


(男性 32歳 野球選手)

                                                                                                            • -


■ケース2


あたしには才能がない。
そんなことは知ってるの。
神様がたまたま指をさした先にいたのがあたしだった。
たったそれだけのこと。
運が良かったの。最初はそう思ってた。


今のあたしの「役割」は元気に歌うこと。
上手に歌うことじゃないの、ただ元気に、ひたむきに。
みんなが求めているのは健気に歌う「女の子」。
テレビに写るだけの都合のいい「女の子」。


求められるのは、本当のあたしじゃないって。
そんなの分かってる。それでいいの。
だってあたしには才能がないんだから。


けどね、あたしはわかってるの。
だから、いつでも求められる「あたし」でいることができるの。
相手が望む「あたし」っていう人形になれるの。
これも才能っていうんじゃないかしら?


一番のタブーは人形のお芝居を辞めちゃうこと。
みんなすぐに辞めたがる。
本当のあたしは違うんだって、汚いあなたをさらけ出したがる。
どうしてなのかしらね、不思議だわ。
だってそうでしょ?


本当のあなたは汚いんだもの。
離婚をするからって同情してくれると思うわけ?
「同情するなら金をくれっ!」って、あなた。
そんな乾いた涙には誰も振り向いてくれないわ。
世間はそんな甘〜いもんじゃないの。


あたしはそんなヘマしない。するもんですか。
いつまでもみんなが求める人形でいてやるんだから。
そしたら例の神様(白ひげ映画じじいw)も、またあたしが必要になるはずだわ。
ヒット曲が1曲じゃ、営業でロリコンオタクどもから搾り取るのも限界があるからね。
もう一発当てたいとこだわ。
…まあいいわ。とりあえずは目先のことが大事なのよ。


「正直、あと2年くらいはポニョで食っていきたい」


これってトリビアにならないかしら?


(女性 9歳 歌手)





                                                                                                                                          • -

2年前にオレンジ色のチラシの裏に書いた文章でした。
懐かしかったので、こちらにも。







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