「明日に向って撃て!」を観ました。






うまくやれると思っていたんだ
夢で夢を奪う人生を
ユーモラスの銃弾に込めて


泥水に倒れこむ自転車
映るホイールは空回りさ
最高だろう


奪い取った昨日なら
利子付きの未来で返してやる
それでもいいならついてこいよ
止まった時間の中を駆け抜けろ
明日に向って撃て



                                                                                                                                                        • -



そんなわけで昨日「明日に向って撃て!」を鑑賞しました。
東宝が展開する素敵キャンペーン「午前十時の映画祭」の一作でございます。
学生の私は500円で過去の名作がスクリーンで堪能出来るということで、足繁く通っております。
もっとも「用意された名作を鑑賞する容易さ」も少し問われる今回のキャンペーンではありますが、この機会は逃せませぬ。


そんなわけで「明日に向って撃て!」ですが、今の私には悲しい映画に見て取れました。
男たちは夢で夢を奪うように列車強盗を繰り返すが、時代の変化に取り残され、顔のない追っ手から逃げるようにボリビアへ。
新天地でも彼らは踊るように悪事を続ける。しかし、夢を彼らの前に提示される現実は彼らに強盗意外の人生を許してはくれなかった。
だから、彼らは死しても尚、夢を見ることを選んだ。
あの有名なラストシーンが描いたのは、やはり夢の先の見えない夢だったのじゃないかと、そんなことを考えていました。


やはり象徴的なのは執拗に2人を追跡する「顔の無い追っ手」の存在でしょうか。
おそらくは「先の見えない現実の恐怖」のメタファーである追っ手の存在に、彼らは「どこまでも全力で逃げきる」ことを選んだ。
それは臆病ながらも彼らの生き様を美しく描いているのです。


また、この映画で「未来」のメタファーとして登場するのが自転車。
ボリビアに行くことを決意したとき、主人公はこの自転車をぶっきらぼうに手放してしまいます。
主を無くした自転車は倒れ、カラカラと車輪だけが廻る。
主人公たちの未来、ボリビアでの生活が空回りすることを暗示する印象深いシーンでした。


「人は生まれ変わることができる」と誰もが口にします。
しかし、たった一度の人生の途中から「生まれ変わる」ことは途方もなく難しい。
実際、彼らは幾度とあった強盗から足を洗うチャンスを逃してしまった。
いや、生まれ変わることなんて出来やしないのでしょう。
完全に生まれ変わらずとも、酸いも甘いも身体に溶かしていくように変わっていける人生を送りたいなと思う次第です。


ただ、無責任なことを言うならば、最後まで夢で夢を奪うことを捨てなかった彼らはたまらなく格好良かったし、だからこそ哀しかった。