羅列4「透明な傘の上に雨が咲いた」
大貫妙子さんが1978年に発表した「都会」という楽曲がある。
この歌詞に七夕の日の心は囚われていた。
華やぐネオン、眠らない街に踊る人々を横目に「私」は凛と告げる。
「その日暮らしは止めて 家に帰ろう 一緒に」
1978年といえば日本が鰻登りの夢を見ていた頃。そんな時頃に冷静な視点を落とす大貫妙子さんの心持ちには驚かされる。
時代は巡って今や2011年、私たちはすっかり夢を見なくなった。いや、夢を見ることを恐れるようになった。
きっとそれは進歩した科学の恩恵で、虹のふもとに何も無いことを知ってしまった現代人の悲哀なのかもしれない。
けれど、1978年に踊っていた彼らもまた、今と同じように夢の終わりを恐れていたのではないかと思うのだ。
夜の街を駆け巡りながら、頭の片隅で家に帰ることを、居間に腰を下ろしてゆっくりと時間を刻むことを望んでいたのかもしれない。
一緒に遊んでいたクラブの姉ちゃんが突然「あたし、もう帰りたい」と言い出して、夢から覚めた誰かもいたのかもしれない。
今となっては全て割れた泡の中のお伽話。
2011年に住む私たちもきっとどこかへ帰りたがっているのか。
勿論、そんなことも言っていられない昨今だ。ただでさえ消えかかる数字のような現実を掴み取らなければ、吊り橋の糸は切れて川底に落ちてしまう。
そういう意味ではいくら文明が進歩しても人は「その日暮らし」から逃れることが出来ないのかもしれない。
それでも、時として消えかかる数字に手を振って、家に帰る勇気が必要な時もあるだろう。
本来、人間の手など誰かと手を繋ぐためにあったはずなのだから。
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